
過去を後悔したり、未来を心配したり、そんなことばかりを思い悩んでいた頃、「一夜賢者の偈」というお釈迦様の教えを知りました。過ぎ去ったこと、まだ来て無いことに心をとらわれず、今をしっかり生きよう…そんな教えです。
知ってみると当たり前のことなのに、この時はハッと大きな気付きを得ました。今でも不安や恐怖で感情が乱されると、思い煩う自分に陥ってしまいますが、この言葉を思い出し、「今、何をやるべきか?」に焦点を当てるようにしています。
巷では新型ウイルスによる病気で、恐怖と不安に日々苛まれている方が多いと感じられます。未来の心配に明け暮れて右往左往することなく、今やれることに取り組むことを願っています。
一夜賢者の偈
過ぎ去れるを追うことなかれ。
いまだ来たらざるを念うことなかれ。
過去、そはすでに捨てられたり。
未来、そはいまだ到らざるなり。されば、ただ現在するところのものを、
そのところにおいてよく観察すべし。
揺らぐことなく、動ずることなく、
そを見きわめ、そを実践すべし。ただ今日まさに作すべきことを熱心になせ。
たれか明日死のあることを知らんや。
まことに、かの死の大軍と、
遭わずというは、あることなし。よくかくのごとく見きわめたるものは、
増谷文雄 訳 『阿含経典第五巻』
心をこめ、昼夜おこたることなく実践せん。
かくのごときを、一夜賢者といい、
また、心しずまる者とはいうなり。